コラム

社会人サッカーのある日曜、目覚ましより先に始まっている自分の朝

社会人サッカーのある日曜、目覚ましが鳴る前に集合案内を開き、バッグを確かめる。 給料にも評価にもならない朝の支度を、私たちはなぜ繰り返すのか。 キックオフ前の選択と、仕事での先回りに重ねながら、自分で選んだ予定へ出かける日常の意味を見つめます。

2026.10.22 読了5分 文:pullaway

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朝の光が差す玄関で、スポーツバッグの隣に座って靴ひもを結ぶ男性のイラスト。

枕元のスマートフォンを手に取ると、目覚ましが鳴るまで、まだ少し時間がある。

日曜だと分かって、そのままチームの連絡を開く。

会場の変更はない。

集合時刻も、昨夜確かめたままだ。

画面を閉じて、しばらく天井を見る。

もう一度寝ようかと思いながら、玄関に置いたバッグの中を頭の中でたどる。

ユニフォーム、ソックス、すね当て。

そこで、すね当てを入れた記憶だけが少し曖昧になる。

結局、立ち上がってファスナーを開ける。

ちゃんと入っている。

まだ誰からも連絡は来ていないし、家を出る時間でもない。

それでも、自分の日曜はもう動き始めている。

社会人サッカーの朝は、いつ始まるか

芝の上のサッカーボールと、奥で話す審判と選手たちのイラスト。
キックオフの前にも、その日の選択がある。(生成イラスト)

社会人サッカーの試合には、キックオフという、みんなで共有する始まりがある。

その少し前には、主審と両チームの代表が集まるコイントスがある。

国際サッカー評議会(IFAB)の競技規則第8条では、コイントスに勝ったチームが、前半に攻めるゴールか、キックオフを行うかを選ぶ。

勝った側が攻めるゴールを選べば、相手がキックオフを行う。

キックオフを選べば、攻めるゴールは相手が選ぶ仕組みだ。

コイントスは、単に先に蹴る側を決めているわけではない。

どちらへ攻めるかという選択も、試合の入口に置かれている。

ピッチに立てば、日差しや風の向きが気になる。

最初のボールを自分たちで持ちたい日もあるだろう。

試合が始まる直前から、すでにその日のサッカーについて考えている。

ただ、そこまでの朝には、競技規則に書かれていない選択がいくつもある。

何時に起きるか。

いつ家を出るか。

待ち合わせまでに何を済ませるか。

起床から会場へ着くまでの時間は、試合の記録には残らない。

それぞれ別の家で準備して、違う道を通り、同じ集合場所へ向かっている。

出発時刻も、交通手段も、朝に済ませる用事もそろっていない。

集合時刻だけが、そのばらばらの朝の先に置かれている。

目覚ましより先に起きたからといって、先発が決まるわけではない。

早く起きた分だけ、ボールがうまく収まる保証もない。

会場に着けば、いつもと同じようにパスをずらすかもしれないし、決めたかったシュートを外すこともある。

それでも玄関のバッグを持っていく。

今日の出来が分かるより前に、行くことを選んでいる。

もちろん、目覚ましが鳴ってから起きる日もある。

ぎりぎりまで布団にいて、慌てて支度する朝だってあるだろう。

ここで気になるのは、起きた時刻の早さではない。

まだ試合も始まっていない時間に、頭の中では、すでに今日のパスや顔を合わせる相手のことを考えている。

休みの日の予定が、面倒な準備も含めて、自分の中に場所を取っている。

いまバッグを開けている人は、そのことをわざわざ言葉にしない。

忘れ物がないか見ているだけだからだ。

誰にも見られない準備は、何になるか

朝の光が差す玄関で、スポーツバッグの隣に座って靴ひもを結ぶ男性のイラスト。
集合場所へ向かう前に、自分の朝が動き始める。(生成イラスト)

平日の打ち合わせで、自分が説明する資料を開く前に、相手が前回どこで迷っていたかを確認することがある。

完成した資料だけなら、先に送ってある。

それでも、聞かれそうなところへ戻り、必要な画面をすぐ出せるようにしておく。

打ち合わせが始まってから、その準備について話すことはあまりない。

質問されたときに、話を止めずに答えるための時間だ。

サッカーでも、パスが出てから動き始めると、受ける場所が狭くなることがある。

ボールが別の味方にあるうちに、少し横へずれる。

自分に渡ってこなくても、その位置を取ったまま次の動きを見る。

実際にボールへ触る場面の手前に、外からは数えにくい仕事がある。

日曜の朝に集合時刻を確かめたり、荷物を入れ直したりするのも、まだ来ていない場面へ先に動いている時間に似ている。

準備そのものを見せるために、バッグの中を撮影してチームへ送るわけではない。

会場で、必要なものを普通に取り出せれば、それで終わる。

日曜の支度には、仕事のような給与明細も、人事評価の欄もない。

玄関で靴を履いていた時間を、誰かが後から集計することもないだろう。

それなのに、連絡を確かめ、忘れ物を探し、出発する。

「好きだから」で済む話なのかもしれない。

けれど、その短い言葉の中には、着替えることも、移動することも、時間を合わせることも入っている。

好きな気持ちだけを持って、ピッチへ瞬間移動できるわけではない。

その間にある細かな動きを、今朝も自分で引き受けている。

いつからこんな朝が、特に説明する必要のないものになったのだろう。

目覚ましより先に起きた日は、時間が余っているはずなのに、支度が早く終わるとは限らない。

「今日は余裕がある」と思って、ユニフォームを入れたバッグをもう一度開ける。

天気を見たあと、集合案内も読み直す。

気づけばいつもの出発時刻で、玄関では結局、鍵を探している。

しかも、念入りに確認したすね当てはちゃんとあるのに、出ようとした瞬間、充電器につないだままのスマートフォンに気づく。

余裕のあった朝が、最後だけいつもの速さになる。

そういう支度に、拍手は起きない。

会場で「おはよう」と言われても、目覚ましより先に起きた話まではしないことが多い。

相手も、さっきまで別の玄関で靴を履いていた人だ。

ひと言あいさつを返したら、荷物を下ろして、その日の準備に加わる。

起床してからここまでの時間は、そこでいったん話の外へ置かれる。

けれど、自分には分かっている。

今日は会社へ行くためでも、頼まれた用事を済ませるためでもなく、この予定へ向かって家を出た。

楽しみな試合もあれば、難しそうな試合もある。

必ず気持ちよく帰れると分かっているわけでもない。

その先がまだ決まっていない日曜へ、ユニフォームを持ってきた。

今朝、目覚ましを止めた手で選んだ予定は、誰のものだっただろう。

これは、日曜の朝に起きて出かけることが、自分で選んだ予定を暮らしの中で実行しているということだ。

今日は、次の試合の集合時刻を一度だけ見てみる。

試合の日、家を出る前に必ず確認するものは何ですか。

朝の集合でいつも顔を合わせる仲間にも、この記事を。

次の週末の予定は、Pullawayの試合日程から。

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