社会人サッカーと普段の仕事、肩書きの外で見えてくる自分の役割
社会人サッカーと普段の仕事には、相手が動きやすくなるよう情報を添える場面があります。 資料の確認、作業の引き継ぎ、味方への声掛け。 何気ない段取りと、職場とは違う役割を手がかりに、平日働きながらボールを蹴る生活の中で見える、自分の一面をたどります。
月曜の朝、仕事の連絡に「お世話になっております」と打ち込む。
相手の名前を確かめ、昨日よりずっと丁寧な言葉を選ぶ。
日曜の自分は、同じ口で「後ろ来てる」「一回戻して」と叫んでいた。
送信する前に文章を読み返していると、昨日の味方の声まで思い出す。
あの場面では、返事を整える暇もなくボールが来た。
今日はまず、相手が何を知りたいのかを確かめるところから始まる。
仕事の画面を開いているのに、頭の隅にはまだ、昨日のピッチが少し残っている。
社会人サッカーでは、肩書きはどうなるか
社会人サッカーの仲間と、長く一緒にプレーしている。
利き足も、パスを欲しがる場所も分かるのに、仕事の詳しい内容は知らない。
営業なのか、現場で働いているのか、店に立っているのか。
聞いたことはあっても、部署の名前までは覚えていないかもしれない。
それでも、あの人がボールを持ったら外へ開く、ということは覚えている。
仕事では所属や役職を添えて自己紹介する場面がある。
グラウンドでは、最初に覚えるのが呼び名とポジションだったりする。
何を任されている人かを知る順番が、平日とは少し違う。
サッカーの競技規則にも、役割と特権を分ける一文がある。
国際サッカー評議会(IFAB)の競技規則第3条では、キャプテンに特別な地位や特権はない一方、チームの行動に一定の責任を持つと定められている。
腕章を巻くことは、判定を自分に有利に変えられる資格ではない。
なお、大会によっては主審との対話をキャプテン中心にする指針を採用する場合があり、具体的な運用は大会の取り決めによる。
この規定を、そのまま会社の組織に当てはめることはできない。
ただ、名前の横に何が付くかと、その場で何をするかは別なのだと考えるきっかけにはなる。
普段は指示を出すことの多い人が、ピッチでは味方に立ち位置を直される。
仕事では確認を待つ側の人が、試合では守備の合図を出す。
もちろん、どちらが本当の自分という話でもない。
場所が変われば、見えているものも、頼られることも変わる。
職場の自分しか知らない人には、日曜に大きな声で味方を動かしている姿は、少し意外かもしれない。
反対に、チームメイトが平日にどれだけ言葉を選んで仕事をしているかは、ユニフォーム姿だけでは分からない。
いつも隣で着替えている人にも、自分の知らない月曜がある。
普段の段取りは、ピッチのどこに出るか

ピッチでは、互いの動きと声でつながっている。
仕事で「これ、確認をお願いします」と頼む前に、少しだけ手を加えることがある。
資料を全部送るのではなく、判断してほしい箇所に印を付ける。
変更した場所と、まだ決まっていない場所を分けて伝える。
相手が探すところから始めずに済むようにする、小さな準備だ。
そのひと手間は、送信履歴にはほとんど見えない。
店や作業場でも、似たことは起きる。
次に使う人が迷わないように道具を戻す。
引き継ぐときには、終わった作業だけでなく、途中になっている箇所を伝えておく。
自分の担当が終わる場所と、相手の仕事が始まる場所が、少し重なっている。
ピッチで味方が相手を背負ってボールを受けるとき、「頑張れ」だけでは伝わらないことがある。
背後から相手が来ているのか、それとも振り向く余裕があるのか。
受ける本人には見えなくても、横にいる自分からは見える。
「右から来てる」「時間ある」と声を添える。
パス一本と、その短い情報が届くことで、受け手は次の選択を考えられる。
職場で変更箇所に付けていた印と、味方の背後を見て出す声。
どちらも、自分が知っていることを、相手が使える形にして渡している。
こう書くと難しく見えるけれど、本人には、ただ放っておけなかっただけかもしれない。
聞き返されそうだから一言足した。
困りそうだったから、先に伝えた。
普段の仕事でも、そんな理由で動いていることはないだろうか。
大きな成果として説明するには小さすぎる。
けれど、自分が受け取る側になると、その一言の有無はよく分かる。
試合中に「後ろ見えてるよ」と声を掛けられた場面は、ボールを持っていた本人には残っている。
仕事でも、混み合う前に状況を教えてもらえたことや、迷っていた箇所を示してもらえたことは、助けられた側が覚えているかもしれない。
誰かが前へ進む直前に、少しだけ道を分かりやすくする。
自分の仕事を振り返るとき、売上や完成したもののほかに、そういう場面も数に入れているだろうか。
職場では見せない自分もいる

仕事では見せないうっかりした顔も、いつもの仲間は笑って受け止めてくれる。
仕事の連絡なら、送信前に宛先も添付も確認する。
ところが、チームの出欠には「参加」とだけ返して、集合場所を読んでいなかったりする。
仕事では予定を細かく管理する人が、「今日、何色やった?」とユニフォームの色を聞く。
その問いにはすぐ返事が付くのに、肝心の本人は、バッグに入れた色をまだ確認していない。
普段の仕事ぶりまで知っていたら、少し笑ってしまう場面だ。
一方で、集合時刻に遅れそうな連絡だけは、妙に整っている。
理由、到着見込み、おわびまでそろっていて、急に仕事の文章になる。
「承知しました」と返した仲間も、会えばいつもの呼び名で声を掛ける。
仕事の癖が顔を出したかと思えば、ボールが転がってきた途端、返事は「はいよ」に戻る。
その切り替わりを、説明しなくても受け取ってくれる相手がいる。
平日に任されていることは、もちろん日曜になって消えるわけではない。
うまく進まなかった仕事が、帰り道でまた気になることもある。
それでも試合の間には、別の呼ばれ方をする。
役職ではなく名前で、担当業務ではなく、その場にいる味方として。
仕事で判断を求められることが続いた週でも、ここでは「どこに立てばいい?」と聞ける。
反対に、職場では言い出せなかった意見が、ピッチでは「そっち空いてる」とすぐ声になることもある。
その両方を自分がやっていると気づくのは、少し面白くないだろうか。
月曜になれば、また相手の名前を確かめて、丁寧な文章を書く。
その自分の中には、昨日、味方に助けを求めた自分も、誰かへ声を掛けた自分もいる。
仕事での評価を聞かずに、次の試合の出欠を聞いてくれる仲間がいることを、ふと思い出す。
これは、サッカーを続けることが、仕事の肩書きだけでは決まらない自分の出番を持つということだ。
今日は、仕事で誰かに添えた一言を、ひとつ思い出してみる。
チームの連絡に、つい出てしまう仕事の口癖はありますか。
平日の顔も知っているチームメイトに、この記事を。
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